2005年02月13日

サシバの論文が受理されました

サシバ (Butastur indicus) の営巣場所数に影響する環境要因が受理され、ランドスケープ研究 68(5)に掲載される予定です。論文の概要

サシバ (Butastur indicus) の営巣場所数に影響する環境要因

百瀬浩・植田睦之・藤原宣夫・石坂健彦・森崎耕一・松江正彦

 栃木県宇都宮市近郊で,サシバの営巣場所の分布状況と環境要因との関係について調査を行なった.135か所のサシバの営巣場所を確認し,営巣場所数と環境要素との間の重回帰分析を行なうと,周囲メッシュも含んだ樹林−水田接線長に特に強い関係が認められた.樹林と水田の接線長が長い環境は谷津田の多い環境を示しており,そのような環境がサシバの生息地として特に好適であることを示している.また,当該メッシュでなく,周囲のメッシュも含んだ樹林−水田接線長がサシバの営巣場所数を説明するモデルに採用されたことから,谷津田が断片的に残っているような環境はサシバの生息には適しておらず,まとまって存在することが重要と考えられる.サシバの食物のうち,アカガエルとヘビ類については断片的に残った水田では生息密度が減少することが知られているので,環境の断片化による食物の減少がサシバの生息数の減少につながっているのかもしれない.
 水田の面積は従来の研究では重要な環境要素となっていたが,今回の解析では逆に負の相関が認められた.これは,従来の研究が谷津田のみを対象にして解析を行なったのに対して,本調査では市街地,水田地帯,谷津田のすべてを含む広い範囲を対象として解析したためと考えられる.本調査地で水田の面積が大きいということは,谷津田のある環境というよりもむしろ大規模な水田地帯を意味し,そのような環境にはサシバは少なかった.猛禽類の繁殖密度は主に営巣場所と採食場所によって決まってくると考えられている.サシバは小面積の屋敷林でも繁殖している(著者ら 未発表).したがって,大規模な水田地帯にも営巣するのには十分な屋敷林が点在していたにもかかわらずサシバが少なかったのは食物の量と採食のしやすさによるものと思われる.サシバは 5〜6月にかけては,林縁や水田で採食するが,その後は樹冠部での採食頻度が増加する.本調査でも採食行動の28.6%は樹冠部で観察され,巣に運搬してきた食物のうち明らかに樹冠で捕食したと思われるチョウ目の幼虫や,樹冠で捕食した可能性の高いニホンアマガエルが大きな割合を占めていた.したがって樹林面積の少ない水田地帯よりも,水田も樹林もある谷津田の方が,サシバが繁殖期を通して利用できる食物が多いのかもしれない.また,サシバの主要な食物であるカエル類のうち,ニホンアカガエルは水田で繁殖し,成体は樹林を生息地に使うなど,生息のために樹林と水田の両方が必要であること,大規模な水田地帯の方が一般に基盤整備が進んでいることが多く,基盤整備の進んだ水田にはニホンアカガエルやトウキョウダルマガエルは少ないなど,水田だけに着目しても,谷津田の方が食物の現存量が多いと考えられる.
 今後は本論文で示されたサシバの営巣場所数の予測式を他の調査地についても当てはめ,修正していくことによって,より汎用性の高いサシバの営巣場所数の予測式をつくり,個体数の減少しているサシバの保全計画の策定や,減少要因の解明などに役立てていきたいと考えている.


posted by バードリサーチ at 16:55| 論文・記事 | 更新情報をチェックする
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